産後の恥骨痛について解説

出産後というのは妊娠後期の負荷や分娩時のダメージによって恥骨に痛みが続くケースがあります。「なんとなく痛いけど我慢できる」という理由で放置してしまうと、日常生活に支障をきたすほどの症状に悪化することがあるので注意が必要です。

もし、以下の項目に該当すれば今回の記事は必ず最後までお読みください。

  • 寝返りをしたとき
  • 起き上がったとき
  • 横向きに寝るとき
  • 歩いているとき
  • 座った状態から立ち上がるとき

このような場面で恥骨に痛みが出る方は、症状が強い可能性が高いのでしっかりとケアしていく必要があります。実際、当院の患者様でも恥骨痛で悩んでいる方は非常に多いです。

当院の患者様でのデータでは約35%の方に恥骨痛が発生しています。

恥骨痛は事前の予防対策が重要ですが、病院で教えてくれるところは非常に少ないので、自分自身で理解をして対策をしていく必要があります。

ただ、恥骨を含めて骨盤というのは思った以上に複雑な構成になっていて、骨盤には恥骨だけでなく・坐骨・尾てい骨などいろいろな骨が組み合わさってできています。

恥骨痛の研究は「恥骨結合離開」という関節が離れてしまう症状の研究が大半になっていて、発生率の高い恥骨痛の情報が少ないのが実際のところです。

妊娠中から出産後に出やすい恥骨痛を緩和させて、快適に育児を進めていきたい方は有益な内容になっているのでぜひ最後までチェックしてみてください。

目次

恥骨の構造を理解する

まずは骨盤の構造について解説していきます。骨盤はこのような形をしているのですが、恥骨はこの位置になります。

恥骨には太ももの内側にある内転筋という筋肉であったり、腹直筋いわゆる腹筋がつながってくる部位になります。上半身と下半身の両方の筋肉からつながってくるところが恥骨になるので、意外と負荷がかかる部位でもあります。

通常時はこの恥骨部分は軟骨を挟んで4〜5㎜くらいの間隔と言われていますが、妊娠中は少なくともホルモンの関係でさらに2〜3㎜広がります。

分娩時にはさらに広がっていくので、それによって炎症や靭帯損傷なんかを起こして恥骨痛が悪化しやすくなります。

恥骨の離開が1㎝を超えると不安定になるので炎症が悪化しやすく、歩行時痛も引き起こしやすくなるという研究もあります。

恥骨の隙間が2㎝を超えると恥骨だけでなく、骨盤の後ろにある「仙腸関節」という部分の痛みも頻繁に起きるというデータもあるので、どれだけ恥骨が離れてしまうか?によって症状は大きく変わると言えます。

恥骨結合離開とは?

ちなみに1㎝以上恥骨が離れると「恥骨結合離開」という診断をされる可能性が高くなります。

これは個人差がかなり出ますが、発症者の約半数ほどは2㎝前後恥骨が離れる傾向にあります。かなりひどいケースでは6㎝離れたデータもあって、その場合は手術も必要だったりします。

基本的に症状がひどくても大半は保存療法で回復するようですが、ごく一部、このような事例もあります。

この恥骨結合離開はいろいろな研究データがありますが、発生率は300/1〜30,000/1というように、かなりバラつきがあります。

よく、「出産後は恥骨が大きく開くので産後骨盤矯正をしましょう」という情報を見かけますが、もし、恥骨結合離開になった場合、歩くのもきついはずなので、私自身は骨盤矯正するにあたって恥骨部分はやらなくていいと考えています。

日常生活をまともに送れない症状であれば、無理に整体に行かず、まずは安静でいいのかなと思います。ある程度動ける状態になってからカラダのメンテナンスで整体に行くのがオススメです。

恥骨痛がある方の特徴

恥骨痛がある方というのは太ももの内側にある「内転筋」という筋肉が固くなっていることが多いです。

筋肉が固くなると縮む力が発生するのですが、内転筋というのは恥骨から膝に向かって付いていて、内転筋が緊張状態になることで恥骨自体に負担がかかってしまいます。

Screenshot

とくに妊娠後期のあたりからお腹が大きくなる影響で動きのバランスが崩れたり、ホルモンの影響で骨盤の緩みが出る影響で、立ったときとか歩いたときの重心も一緒に崩れてしまうパターンがすごく多いです。

よくあるのがガニ股のようなバランスですね。重心が内側か外側に偏ることで太ももの筋肉も偏った使い方になって、部分的な緊張が生まれやすくなります。

それで恥骨に負担がかかってしまうと、日常のふとした動作で痛みが出やすくなってしまいます。

恥骨痛の発生率に関していろいろ調べてみたんですけども、ほとんどが先ほど解説した恥骨結合離開のもので、重症ではないけど日常でストレスになるという恥骨痛のデータがあまりいいのがなかったので、当院の患者さんのデータで蓄積されている状態です。

公的なものではなく自社でのデータになるので参考程度に受け取っていただきたいのですが、妊娠中・出産後問わず、恥骨痛が発生した方は約35%でした。

このデータをどう受け取るかは個人によって変わると思いますが、私個人としては結構発症率は高いなという印象を受けました。

さらに細かく恥骨痛のある患者さんのデータをチェックしてみたところ、恥骨痛がある方は尿漏れを併発している率が約41%とかなり高かったです。

恥骨の位置は骨盤底筋とかなり近い位置で、骨盤底筋の一部は恥骨に付着しますし、恥骨筋には膀胱や尿道を安定させたりする働きがあるので、恥骨痛を発症している場合は尿漏れが発生しやすいと言えます。

これは、当院の患者様データを細かくチェックしていて新たな発見でした。

数値化するといろいろ見えてくるものがあったので

  • 分娩時間
  • 出生児体重
  • 妊娠時体重増加幅

などの関連もチェックしてみたのですが、これらはあまり関連がなさそうでした。

これも論文を調べていると、今挙げた内容との関連は見られなかったという情報が多かったですが、まさにその通りの内容になりました。

論文の中には

  • 症状が強い場合は大腿の上内側に放散痛が出ることがある
  • 中には坐骨結節まで及ぶこともある

というものがありましたが、たしかに当院の患者様でもこのような症状を訴える方がたまにいます。

坐骨は恥骨から少し離れているので直接的な関連は薄いかな?と個人的に考えていたのですが、恥骨痛はいろいろな要素と関わる可能性がある症状なので、今後も今後もいろいろな角度から調査していきたいなと思います。

恥骨痛のセルフケア方法

恥骨は太ももの筋肉からつながるものが多いため、ケアをする場合はそこを意識していきます。自分でマッサージしたりストレッチをしてケアをすることは効果的であるため、ここではオススメのセルフケア方法を解説します。

内転筋マッサージ

恥骨痛をどうやってケアしていくか?なんですが、太ももの内側にある内転筋というところを狙っていくのが出産後でも妊娠中でも関係なくできるのでオススメです。

先ほども解説した通り、恥骨からはこのような形で筋肉がつながっていきます。筋肉というのは固くなると縮む性質があります。

この縮む力でつながっている部分の骨に負担をかけてしまい、痛みの原因となります。なので、恥骨に直接つながる筋肉を緩めていくケアが効果を出しやすくなります。

もし自分でケアをするのであれば、座った状態で片足を外側に開きます。この状態のまま内転筋の部分を捉えて膝の内側に向かって圧をかけていきます。

このように親指を使って押していってもいいですし、指を立てて上から押すのもアリです。やりやすい形で内転筋を狙っていってください。

これは妊娠中でもできるケアなのでオススメです。

恥骨痛の原因が主に筋肉であれば効果を実感しやすいですが、恥骨自体に強い炎症があったりすると少し筋肉を緩めた程度では痛みに変化が出ないことが多いです。

もし、痛みが変わらない場合は病院や治療院に行ってチェックしてもらうのがいいと思います。

片足開脚

ストレッチをしていく場合は、片足を広げて開脚をします。

通常の開脚ストレッチではハムストリングという筋肉が中心に伸びて、内転筋にはあまりテンションがかかりません。

内転筋にテンションをかけるには、このまま足を内側に向けていきます。

もし妊娠中であれば上体を前に持っていくのが大変なので、このやり方がいいと思います。難しい場合は無理にストレッチせず、先ほど解説したマッサージを重点的にやっていきましょう。

まとめ

出産後は恥骨痛が発生しやすいです。ひどくなると日常生活に支障が出るので、違和感があればすぐにケアをしていきましょう。妊娠中から出産後にかけてカラダの状態であったり、柔軟性が個人によって大きく違うので、臨機応変に対応をしていきましょう。

もし不安であれば骨盤矯正含めた施術も効果的なので、疑問があればすぐにご相談ください。

産後初回検査

※痛みや不具合の出ている部分の確認・検査を行います。骨盤を締める手技は行いません。

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