産後の「腹直筋離開」完全解説

こんにちは!飯島です。

今回は産後の腹直筋離開について解説していきます。

出産後に

  • ぽっこりお腹
  • おへそが出てしまう(臍ヘルニア)
  • 腰痛

このようなお悩みはないでしょうか?

もし、該当すれば腹直筋離開の可能性があります。

ただ、「腹直筋離開」って何?って思いますよね?

専門的な用語を使うと難しく感じてしまいますが、すごく簡単に言いますと腹筋が外側に離れてしまう症状です。

それによってお腹が出やすくなったり、腹筋が上手く使えないことで動きのバランスが崩れて腰痛などの原因にもなります。

実は妊娠中から発症しているケースが多く、妊娠後期から出産後にかけて腹直筋離開になる確率はほぼ100%です。

え!?そうなの?そんなの病院で聞いてないんだけど?と思いましたよね?

ほぼ100%発症するものであるにもかかわらず、病院では予防対策などを教えてくれるところは非常に少ないです。

産後の尿漏れでもそうですが、日本では腹直筋離開に対して、予防対策の指導をしているところはかなり少ないのが現状です。

基本的に病院では分娩時に支障が出ること以外の指導はありません。

なので、腹直筋離開であることを告げられず、そのまま過ごしてしまう方が多いのが実態です。

もし、あったとしても助産師さんが個人的にアドバイスしてくれる程度であることが大半になります。

なので、自分でしっかりと腹直筋離開に対して理解をした上で対策をとっていくことが重要です。

そこで今回は

  1. 腹直筋離開の定義
  2. 症状と日常への影響
  3. 腹直筋離開の対策

以上、3つを解説しています。

かなり細かく解説しているので、この記事で腹直筋離開の知識は深まります。

ぜひ、最後までチェックしてみてください。

①腹直筋離開の定義

まずは腹直筋離開とは何か?について解説していきます。

腹直筋離開とは文字通り腹筋が外側に離れてしまう症状のことを言い、ヘソを中心に上下4〜5㎝ほどの幅の範囲で、指2本分くらい腹筋が離れていると腹直筋離開だと思ってください。

しっかりとチェックしたい場合は

  • 仰向けに寝て、膝を曲げます
  • そのままアゴを引くように頭を上げていきます

首がつらい方は片手で支えてもOKです。

  • もう一方の手をお腹に置きます
  • おへそのすぐ上のラインに指を押し込みます
  • 息を吐きながらゆっくりと頭と肩を上げていきます
  • このときに腹筋の間に隙間があれば腹直筋離開である可能性が高いです

おへその上だけでなく下も同様にチェックしてみてください。

※強く押しすぎないように注意して、もし痛みが出たらチェックするのを中止しましょう。

症状が出る原因としてはお腹が大きくなることで腹圧が常に高まり、その影響で腹筋が外側に離れる力が加わることで発症します。

論文に記載しているものはなかったですが、私個人としては反り腰の方はお腹が前に出る動きが強いので腹直筋離開になりやすいのでは?と考えています。

では、どれくらいの人が腹直筋離開を発症しているかといいますと、これは論文によってバラつきはありますが

妊娠21週目:約33%

妊娠35週目:100%

産後6週間:約60%

産後6ヶ月:約45%

産後12ヶ月:約32%

このようになります。

出産の前後はほぼ腹直筋離開を発症していると考えていいです。

思った以上に発症していますよね?

このデータを見るとお腹が大きくなるにつれて発症率が高まり、出産後徐々に回復していくことが数字として明確になっています。

ただ、出産後から1年経過しても約30%の人は症状が改善していない状況なので、なかなか治らない人はしっかり対策を取る必要があると思います。

また、普段から力仕事をしている人は発症率が2倍以上高いという研究データもあります。

これはおそらく腹圧が高くなる場面が日常的に多いからだと思われます。

②日常への影響

腹直筋離開になるとどのような影響があるのか?なのですが、代表的なのは「ポッコリお腹」です。

出産後にお腹が出てしまって悩んでいる方も多いですが、いかがでしょうか?

腹筋が外側に離れることでインナーマッスルを含めてうまく筋肉を使うことができません。

それによって抑えが効かずにお腹が出てしまいます。

次に腰痛などの影響ですが、腹直筋離開が直接腰痛などを悪化させる原因だとはならないという論文が多かったです。

これも意外ですよね?

私個人としては、腹筋が上手く使えないと動きのバランスが崩れてしまい、それによって腰痛などが悪化するイメージがありましたが、出産前後はさまざまな影響を受けるので、腹直筋離開が単独で腰痛などを悪化させると断定するには根拠として乏しかったという感じです。

とはいえ、腹直筋離開によって腹筋が上手く使えない状態というのは、出産後のダメージに加えて反り腰や猫背など、もともとのクセと関連して腰痛などを悪化させる要素にはなっているはずなので、しっかりと症状について理解をして対策を取っていくのが重要です。

また、腹直筋離開は脱腸リスクを高めるという研究結果もあります。

臍ヘルニアともいいますが、これによって、いわゆる「出べそ」のような状態になります。

なので、いろいろな研究結果を比較してみると、腹直筋離開は腰痛などカラダの症状への影響よりも、どちらかと言うと見た目に対しての影響が大きいかな?というのが個人的な考えです。

③腹直筋離開の対策

ここまでの内容で、腹直筋離開についてある程度理解していただけたかと思います。

生活習慣によって発症率が若干変わることを踏まえたとしても、産後1年以上でも30%前後の方が腹直筋離開が残っているのは、確率としてはかなり高いかなと思います。

なので「自然治癒するからいいや」と放置せずに、適切な対応をする必要があります。

腹直筋離開の対策についてはネットやSNSで調べるといろいろな情報がありますよね?

私も他の方の発信している情報をチェックしましたが、これでは医学的な知識のない方は情報の取捨選択が難しいなと思いました。

例えば

  • 産後1ヶ月は運動してはいけない
  • 腹筋をすると悪化する
  • インナーマッスルを鍛えるのはOK

など、情報がいろいろあって何が正しいのかわからない方も多いかと思います。

なので、ここでは論文を比較した内容・私個人の考えや実際にサポートしてきた経験をお伝えしていきます。

まず、いろいろな論文を比較してみた結果、エクササイズによって腹直筋離開を悪化させる根拠はないというものが多かったです。

中には、エクササイズによって腹直筋離開が悪化するケースもあったり、逆にエクササイズによって35%腹直筋離開が減少したという結果もありました。

研究内容としては被験者に「カールアップ」といって、仰向けで頭を上げる 動作で簡単な腹筋運動のような丸まる運動をさせるのはよくないけど、ドローイングといってインナーマッスルを強化するのは効果的というものもありましたし、

その他ではカールアップのみをしたグループと、先にドローイングをしてインナーマッスルを活性化させた上でカールアップをさせたグループに分けて研究をしたものもありましたが、これについても明確な差はありませんでした。

なんとなく、先にインナーマッスルを活性化させた上でエクササイズをした方が効果的なのかな?と思っていましたが、強い根拠を提示するまでの結果はなかったということです。

共通しているのはエクササイズが腹直筋離開に対して効果的とも悪化させるとも言い切れないというものが大半を占めていました。

要は、医学的に決定的な根拠を示せなかったということですが、これではより何をしていいかわからなくなりますよね?

これらの情報や私の経験からお話させていただくと、腹直筋離開の対策としてエクササイズは効果的だと考えています。

ただ、これには一つ条件があります。

それは、正しいフォームで動くということです。

実は、意外と腹筋運動含めて体幹を自由にコントロールして動かすというのは難しいんですね。

それを出産後の腹筋が使いにくい状態で行えば、個人の運動能力によって結果はかなりバラつくんじゃないかなと思っています。

だから、いろいろな研究が行われていても決定的な根拠を提示できないのではないかと考えています。

ちなにみ私が産後骨盤矯正の方をサポートするときは、

  • クランチ
  • ドローイング

という2つのエクササイズを提案させていただくことが多いです。

エクササイズスタート時期は早い方で産後1ヶ月からです。

これを聞くと、他の方の情報と違うと思います。

一般的には「出産後数ヶ月は運動してはいけない」「腹筋運動はしてはいけない」という情報が占める中で、こういうことを言うと、ホントなの?と思いますよね?

ただ、先ほども言ったように正しいフォームで動けるのであればエクササイズは出産後早い段階からやっていいと考えてますし、それで腹直筋離開を悪化させたことはありません。

なぜかと言いますと、正しいフォームでエクササイズできる=筋力が一定レベルまで回復している目安になるからです。

たとえ、最初に伝えたフォームで動けなくても、筋力が戻っていればすぐに適応できます。

逆に、産後から1年経過していても、正しいフォームで動けないならメニュー構成は慎重に組むべきで、「産後から時間が経過しているからエクササイズOK」とはなりません。

産後からかなり期間が経過してるにも関わらず、腹直筋離開が治らず、エクササイズも上手くできない状態の方は妊娠前の時点でベースの筋力が弱い可能性が高いです。

その状態で妊娠〜出産を経ることでさらに筋肉が落ちているので、こういったケースはリハビリのようなメニューから組み立てていく必要があります。

以上、まとめますと、私の考えとしては

  • 正しいフォームで動けるならエクササイズOK
  • 正しいフォームで動けないなら悪化させるリスクあり

このように考えています。

ただ、正しいフォームはどうなの?と思いますよね?

これに関してもいろいろな情報が出ているので何をベースに取り組めばいいかわからないと思います。

なので、Instagramでは出産後にお腹が出てしまって悩んでいる方向けにエクササイズの解説動画を出しております。

かなり筋力が落ちてしまっている方だけでなく、ある程度動ける方も参考になる内容なので、ぜひチェックしてみてください。

Instagramのリンクはこちらをクリック↓

まとめ

ここまで産後の腹直筋離開について解説してきましたが、ざっくりまとめると

  • へその上下のラインを基準にして指2本分くらい離れていると腹直筋離開になっている状態
  • 妊娠後期にはほぼ100%腹直筋離開になっている
  • 出産後1年経過しても約30%の人は症状が改善していない
  • 腹直筋離開になると臍ヘルニア、いわゆる脱腸になり「出べそ」のような状態になりやすい
  • 腹直筋離開と出産後の腰痛は直接的な原因があるとは言えない
  • 腹直筋離開の対策として、腹筋運動やインナーマッスルを鍛えるエクササイズは大きな改善をもたらすとは言えない(論文比較の結果)
  • ただ、私個人の考えでは正しいフォームで動ければエクササイズ効果は望める

このようになります。

医学的に「こうすればいい!」というものがない症状なので、対策は個人によって大きく変わります。

ぜひ、この記事を参考にした上で今後の取り組みを頑張ってください!