栄養は“摂取量”だけで判断してはダメ?間違いだらけの栄養学に注意

「1日のタンパク質は体重×1.5g」「水は1日2リットル」こんな栄養摂取の”共通ルール”を聞いたことはないですか?

例えば、同じ女性でも身長150cm・50kgの人と身長165cm・65kgの人では必要な栄養素は当然違うはず。にもかかわらず、多くの情報は個人差を無視した「摂取量」だけを基準にしています。

そして、SNSやメディアの情報の多くは「○○を食べたら痩せる」「○ヶ月で−○キロ!」という結果だけを強調したストーリーが中心。これでは、筋肉を落とさずに健康的に痩せて、その状態を長く維持するのは難しいです。

私は産後骨盤矯正専門の整骨院を経営しながら、これまで1,000名以上の方のダイエットサポートをしてきました。その経験から言えるのは、「体重を減らす」だけなら簡単ですが、「健康的に痩せて維持する」には、栄養摂取量だけでなくカラダの反応を多角的な視点が必要になります。

この記事では、単なる「摂取量」に捉われず、自分のカラダの変化を基準にした栄養の考え方について解説します。個人差を考慮した「あなたに合った」食事改善の指針が見つかるはずです。

目次

なぜ栄養は「摂取量」だけで判断してはいけないのか?

ダイエット情報が溢れている現代において、多くの情報が「摂取量」に焦点を当てています。しかし、栄養の必要量は個人によって大きく異なるのが実際のところです。

個人差を無視した栄養指導の危険性

まずは以下の数字をご覧ください。

  • 身長150cm・体重50kgの女性
  • 身長165cm・体重65kgの女性

この2人が同じ栄養摂取量でダイエットすれば、結果が変わる可能性が高いです。

多くの情報発信は「○ヶ月で−○キロ!」というビフォーアフターの結果だけを強調し、その過程での体調変化や継続性についてはほとんど触れていません。

自分のカラダの反応を基準にする重要性

ダイエット成功には、自分のカラダの状態に意識を向けることが重要です。具体的には次のポイントをチェックしましょう。

  • 体重の変化:増加・停滞・減少のパターン
  • 肌の状態:荒れ・乾燥・かゆみなどの症状
  • 冷え性の有無
  • 疲労感のレベル
  • メンタルの安定度

「メンタルとダイエットが関係ある?」と思われるかもしれませんが、糖質過多による血糖値の乱高下はホルモンバランスを崩し、脳や自律神経に大きな負担をかけます。

多くの研究によれば、これが原因で不安感・イライラ・うつ傾向などが引き起こされることが明らかになっています。それくらい、栄養状態はカラダだけでなく精神面に影響を及ぼします。

細かくカラダの数値を見る重要性

ダイエット失敗の典型例として、溢れていた糖質・脂質を急激に減らすことで負担が増え、我慢の限界からドカ食い→やる気喪失→リバウンドという悪循環があります。

私がダイエットサポートをする際は、クライアントさんによっては一定期間「体重停滞」を目標とすることもあります。なぜなら、どんどん体重が減る設定にすると負担が大きくて継続できないケースが多いからです。

実際、あるクライアントさんは2週間で2kg減らすことを目標にしていましたが、それによるストレスが大きく、短期間で挫折していました。そこで目標を「まずは体重を維持する」というものに変更。まずは現状の食習慣に慣れることを優先したところ、3ヶ月後には無理なく徐々に体重が減少し始めました。

長期的に見れば、体重の減少よりも「リバウンドしない体質づくり」を優先した方が、結果的に健康的な痩せ方につながるのです。

「健康的」なダイエットに必要な要素

体重が減っていても、肌荒れが悪化したり疲労感が増したりする場合、何らかの栄養素が不足している可能性があります。

一般的に推奨されている摂取量を満たしていても、個人の体質によっては足りていないこともあれば、一般的な基準より多く摂取しても問題ないケースもあります。

例えば「痩せの大食い」と言われる人は吸収力が弱く、たくさん食べても栄養が体外に排出されやすいため、一般基準より多く食べないと栄養不足になります。こういった方は筋肉が付きにくいという特徴もあります。

このように、体質によって栄養の必要量は大きく異なります。

体質を正確に把握するための具体的な方法

自分の体質を把握したい場合、血液検査や遺伝子検査が有効です。ただし、簡易的な数万円程度の検査では精度が低いため、本気で取り組むなら数十万円以上の検査が必要になります。

しかし、金額的に細かく検査を受けられる人はごくわずかです。そのときは誰でもすぐに始められる方法として、日々の体調変化を細かくチェックすることから始めましょう。

  • 体重が増えた → 食事量が多い可能性
  • 空腹時間が長い → 炭水化物(白米など)の比率を少し増やす
  • ダイエット中にイライラする → 糖質が急激に減った可能性があるので徐々に減らす

これらの「サイン」を読み取る習慣をつけるだけでも、あなたの体質に合った習慣が見えてくるはずです。

なぜ、他人の成功事例を鵜呑みにしてはいけないのか

情報過多の時代、表面的な情報に振り回されないよう注意が必要です。「なぜ、このような結果になったのか?」という原理原則を理解しないままでは、「○○を食べると痩せる」「○○の運動をすると痩せる」という単純な情報に飛びついてしまいがちです。

例えば「出産後にスクワットすると脚が太くなる」「出産後すぐダイエットしない方がいい」という情報も、発信者に悪意がなくても科学的根拠が薄いケースが多いです。

多くの発信者は医学的知識・栄養学を深く学んでおらず、他の人気発信者をモデルにしているだけかもしれません。そのため「吸収量」「身長・体重に対する摂取比率」「体質の違い」などに根拠が欠けた発信が多いのが現状です。

体質に合った栄養摂取のための実践的なステップ

では、自分に合った栄養摂取法を見つけるためには、具体的に何から始めればよいでしょうか?

  1. 1週間の食事記録をつける:何を、いつ、どれくらい食べたかを記録
  2. 体調変化をチェック:食後の満足度、肌の状態などを観察
  3. 小さな変更から始める:一度に食習慣を変えるのではなく、一つずつ変更し反応を見る
  4. 振り返りと調整:体調や体重の変化を元に、継続的に食事内容を調整する

このプロセスを通じて、あなた自身の「栄養の取扱説明書」を作っていくことが、長期的な健康とダイエット成功への近道となります。

自分のカラダに合った栄養摂取法を見つける

カラダの原理原則を理解せずに表面的な情報だけを追いかけると、一時的に痩せても長続きしない可能性が高いです。健康的なダイエットには、面倒でも基礎知識をしっかり身につけることが大切です。

短期的な数値だけでなく、自分のカラダの変化に敏感になり、多角的な視点から栄養バランスを考えていくことが、40代・50代になっても健康的な体型を維持する鍵となります。

他人の「正解」は自分に当てはまるとは限りません。他人の成功事例ではなく、自分自身のカラダの変化を基準にダイエット方法を構築していくように心がけましょう。

目次